ラジオドラマ意訳・芸能界版リチャード三世
原作・Wシェイクスピア「リチャード三世」 脚色・RIKAKO.M
小金好ショージ リチャード
北島サブ男 エドワード4世(リチャードの長兄・イングランド王)
カマ本ジョージ クラレンス(リチャードの次兄)
アンナオコ アン(ヘンリー6世の息子エドワードの未亡人)
ぴ河ぴよし エドワード(リチャードの甥・クラレンスの息子)
オシ幾三 バッキンガム(リチャードの忠実な手下)
森アサコ マーガレット(ヘンリー6世の未亡人)
美カマ憲一 エリザベス(エドワード4世の妃)
和田アツコ リッチモンド(後のヘンリー7世)
※太字はナレーション。チョン!は拍子木の音で、これで場面の切り替わりを表します
さぁ、今宵お送りするは「リチャード三世」を大胆に意訳した芸能界版リチャード三世!
よく似た名前はでてきますが、実際の芸能人や事実とはなんら関係ございません、あくまでリチャード三世の芸能界バージョンという架空の「物語」としてお楽しみくださいますよう、皆様にはよろしくお願いを申し上げます!
でははじめに少しだけ登場人物の紹介などをさせていただきましょう。
まず、主人公リチャード三世は野望はでかいが小銭が大好きな小金好ジョージ。リチャードの兄、クラレンス公ジョージにカマ本ジョージ。二人の1番上の兄でイギリスの王・エドワード4世は北島サブ男、リチャードの甥でジョージの息子エドワードはぴ河ぴよし・・・・くどいようですが、似た名前の実在の人物とはいっさい関係がございません。なにとぞ架空の物語としてご理解ください。
主な登場人物は、今はこれくらいにして、随時、登場するたびにご説明していきましょう。
リチャード三世の本当の舞台は15世紀のイギリス王室。王位を巡って王族が赤薔薇を紋章とするランカスター家と白薔薇を紋章としたヨーク家に分かれて戦っていた、俗に言うばら戦争の時代でございます。
まぁ遠い異国の歴史など、普通はさっぱりチンプンカンプンなものでございます。
というわけでときは現代、舞台は年末の紅白を意識した芸能界にガラリと設定を変えまして、赤組と白組の戦いから白組内で紅白のトリを誰が歌うか、血で血を洗う争いが始まる筋書きでお芝居を始めて参りましょう。
さぁいよいよ幕開き、冒頭は主人公りちゃーど、いえ、歌手の小金好きくんの独白からはじまります、チョンチョンチョンチョン!
ショージ 演歌界の長い冬も白組の太陽ともいうべき、ぴ河ぴよしの活躍によってようやく賑わいが戻り、また大勢のジャニタレのおかげで白組の躍進は留まるところを知らぬ勢い。だが所詮、日本の芸能界は目に見えぬ力が働き、名実共に売れている人間が紅白に出られるわけでも、ましてトリを勤められるわけでもない。いくらジャニタレがヒット曲を出そうが、奴らがCDのリリースすら満足にしていないオヤジ・北島サブ男より上の扱いを受けることはない。だからこそ俺は北島ファミリーにはいりこみ、ひたすらチャンスを待っているのだ。だが、本当に俺の時代はくるのか?!ジャニタレなどは敵ではないが、ピ河ぴよしなどというジャニタレもどきの演歌歌手が持て囃されるこの時代、この俺のようなマッチョで胸毛もむさ苦しい昔タイプの色男に本当にチャンスはおとずれるのか・・・ならば!俺は悪の手先となってこの世の男とも女ともつかぬような中性タイプの色男をすべて否定し、陥れてやる!そして俺はオヤジ北島サブ男に成り代わり、白組の大将となって紅白の大トリを務めてみせようではないか!オヤジはもう年も年だ、俺が手を下すまでもなく奴は間もなくこの世の住人ではなくなるだろう。しかし北島ファミリーにはまだジョージの兄貴がいる。この兄貴を始末しなければ紅白のトリはおろか、北島ファミリーを牛耳ることもままならぬ。だが筋書きはもうできている。まず細井カズコとかいう占い師だかなんだかわからんオバサンが親父に言ったあのセリフ「ケツの痔に気をつけろ」、言葉のニュアンスを少し変えて「ケツの文字Gの男が大将の座を奪う」という予言に仕立て上げ、まずはカマ本ジョージの始末をするとしよう。
チョン!
北島サブ男 それでショージ、お前はその、ケツの文字Gの男がジョージだと?そもそもケツの文字とはなんだ。
ショージ よく頭文字と言うでしょう、1番頭の字がジならば、ジョージとか次郎とか。ケツの文字は最後の文字です。つまり最後の文字が「ジ」になる名前、コージとかジョージとか、ジョージとかジョージとかジョージとかジョージ・・・・
北島サブ男 なるほど、おれはすっかりケツのいぼ痔のことだとばかり思っていたが・・・そういやジョージの奴は最近、タウンダウン・デラックスでわしがウンコをもらした話を暴露するなど、わしを陥れようとしているとしか思えぬ発言が目立つな・・・
ショージ あれはひどい発言でした。いくらバラエティだからといって、言っていい話とそうでない話があります。兄貴がオヤジを本当に尊敬していたらあのような番組でオヤジを笑いものにできるはずはありません!!
北島サブ男 やはりあの予言はジョージのことか・・・
ショージ 私もジョージ兄貴が、とは、信じたくありませんが・・
北島サブ男 それは俺も同じよ、あれだけ夜となく昼となく可愛がってやったジョージが・・・俺を!
ショージ オヤジ!たとえ兄貴がオヤジを裏切ろうとも、俺は、俺は、絶対にオヤジを裏切りはしやせん!
北島サブ男 ショージ!なんと可愛いことを言ってくれる、よ〜し、わかった!これからはお前が俺の1番弟子だ!
ショージ オヤジっ!
北島サブ男 ふふ、これからはジョージのかわりに毎晩可愛がってやるぜ、ショージ!お前のそのイイ声をたっぷりと俺に聞かせてもらうぞ!
ショージ オヤジ!おれはなんと幸せ者なのか
北島サブ男 ふふ、それは俺も同じよ。ショージ!
ショージ オヤジぃ〜いい〜いい〜いい〜
北島サブ男 ショージ!はぁはぁ、これで決まった!カマ本ジョージは本日を持って北島ファミリーから破門する!すぐにマスコミを使って世間に公表だ!
と、こうしてまんまとリチャードこと小金好ショージの策略どおりに話は進み、カマ本ジョージは北島ファミリーはおろか、サブちゃんの威光をおそれた関係者からも総スカンをくらい、哀れジョージの兄貴は地方キャバレーのどさ周りで食いつなぐしか道はなくなったのであります。これから巡業のため青森へ向かおうというジョージの兄貴のもとへ何食わぬ顔をしてショージは見送りにやってきます。
ショージ 兄貴!
兄貴 おお、ショージか!お前・・・誰もが見捨てたこの俺を、よくぞ見送りにきてくれたなあ、うう、♪親の血をひく兄弟よりも〜お乳〜欲しがるこの子が可愛い〜
ショージ 兄貴、いつのまにか「兄弟仁義」が「浪曲子守唄」に変わっています。それを言うなら「堅い契りの義兄弟」ではないかと。
兄貴 コホン、うむ、そうだったな。しかし、いったいどうしてこんなことに!ううう(涙)
ショージ 兄貴、芸能界には底知れぬ闇がある。きっと誰かが兄貴を陥れたに違いない、俺は絶対にそいつを許さない。俺はきっと犯人を見つけ出して、兄貴は無実だとオヤジを説得してみせるぜ!
兄貴 ショージ、お前!
ショージ オヤジだって、きっと誤解がとければ兄貴をこっちへ呼び戻すはずだ!
兄貴 ショージ!そう思うか!
ショージ おれは・・・おれは絶対に兄貴を助ける!!どうか俺を信じて待っていてくれ兄貴!!
兄貴 ショージィ!俺はいまモーレツに感動している!!俺の弟分が他ならぬお前で本当によかったぜ!俺は、俺は、胸がいっぱいで今の言葉だけでどんぶり飯3杯はイケるぜ!
ショージ あ、兄貴ぃ!胸がいっぱいってより腹がいっぱいって感じだが、兄貴ぃ〜
兄貴 ショージィ〜
ショージ あ、あにきぃぃ・・・
兄貴 ショージィ〜
ショージ あ、あ、あにきぃぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・
ぴ〜〜〜〜〜
兄貴 ああ、18歳未満禁止の放送禁止音だか、列車の発車ベルだか知らぬが、何かが鳴り響いている。もう行かなくては・・
ショージ ああ、兄貴ぃ、すごかったぜ、俺は絶対兄貴を忘れない・・・
兄貴 ショージ、俺はお前を信じてるぜ、それじゃあ、、、行って来る。
ショージ きっと、兄貴を助けるから、兄貴、どうかお達者で・・・
兄貴 ショージ、信じてるぜぇ、ショージぃショージぃ〜・・・・(声が小さくなる)
ショージ あ、兄貴ぃ〜・・・・・・・行ったか。ふっ、お人よしのジョージ、俺は単純なあんたが大好きだよ。他ならぬ俺こそがお前を陥れたとも知らず・・・そのまま二度と戻れぬみちをゆけ、そして地獄までの「みちのく一人旅」へと出かけるがいい、ふ、ハハハハ!さぁ、これで目の上のタンコブは消えた。次は親父を痔の治療かなにかでしばらく病院へぶちこんで、ゆっくり年末年始を過ごしていただく。やっとオヤジがステージに復帰した頃にはすでに紅白は終わっているという寸法だ。北島ファミリーはこれでいいとして、紅白のトリを狙うにはまだまだ邪魔な奴らが残っている。美カマ憲一だの五月キヨシだの、それこそヒット曲を持った目障りな連中がな。ここでひとつ、奴らを片付ける前に、俺にもヒット曲が欲しいところ、それも話題になるような・・・そういえば、いち早く片付けておいた元ジャニタレの俵トシピコとデュエットを組んだ女がいたな。あの女自身が大物歌手で、バラエティでの人気もさるもの。あれは赤組の女だが、あの女なら話題は充分だ、よしあの女、必ず手に入れる。そしてデュエット曲で俺にも念願のヒット曲の誕生だ!そのデュエット曲のソロバージョンを売り出せば、俺さまが単独で紅白に登場するのも可能と言うもの。まずはあの女を丸め込み、それから、おもむろに次の勘定にとりかかろう。
こうして、クラレンス公ジョージを目論見どおりに始末したリチャードのように、小金好ショージはカマ本ジョージ兄貴の始末に成功します。ショージの次なるターゲットは「あの女」こと、研ナオコ、いえ「アンナオコ」。本物のリチャード三世では赤薔薇ランカスター家の皇太子妃だったアンがこれにあたります。リチャードはアンの夫や義父を殺しておきながら、アンを口説いて結婚を迫ります。アンはヘンリー6世の遺体と共に登場し、リチャードへの呪いをはきだします。そしてこの物語でもアンナオコは自分のメンコにしていたトシちゃんを陥れたショージへの呪いをはきながら登場いたします――
アンナオコ ああ、すっかり髪が抜け落ちたこの広さを増したおでこに、私は涙の甲斐のない櫛を通すよ、トシ。あのふさふさだったトシの髪を抜けさせた張本人よ、呪われろ!トシをそそのかし、あんたにビッグ発言をさせてマスコミに叩かれる原因を作った、あの人でなし!呪われるがいい。もしあの男とデュエットを歌うような女がいれば、その女はあの男と歌うことで歌手生命を失うがいい!私が「夏盛りへの字組」でデュエットを組んだトシの転落人生を悲しむように、いや、それ以上に苦しむがいいんだ。
ショージ なんと恐ろしい呪いの言葉を。迂闊に人に呪いの言葉を吐いてはいけない。いつかご自分のもとへ帰ってまいりますよ。
アンナオコ まぁ、よくも私の前に顔がだせたものだね、失せろ、この汚らわしい悪魔!あんたが裏で手を回してトシを陥れたことはちゃんとわかっているんだよ!
ショージ あいつは他の誰でもない、自分で墓穴を掘ったんだ。奴が自分で自分をビッグだと奢り高ぶっていたのは事実。そしてそれをマスコミの前でわざわざ言い放ったのも他ならぬ奴自身だ
アンナオコ おだまり、このマッチョ!自分をどう自分で評価しようがそれは個人の自由、それを公言してもお前なら大丈夫と心にもないお世辞を言い募り、トシのビッグ発言の背中を押したのはお前だろう、
「え、そうなんですか?!」
「シッこれはあくまでノンフィクションなんだから、いちいちつっこまない!」
ショージ ・・確かに俺が奴の背中を押したのかもしれない、そう、俺は奴が邪魔だった!
アンナオコ とうとうシッポをだしたね、この悪党!お前のような奴に似合うのは紅白のトリなんかじゃない、どこか田舎の、場末のキャバレーのステージだよ!
ショージ いいや、おれにはもっともっと似合う場所がある。それこそ俺の1番に望む場所!その場所が得られるならば紅白すらも惜しくはないくらいに!
アンナオコ 紅白すら?!
ショージ ああ、それは、あなたの隣だ。アンナオコ!
アンナオコ なんだって!?
ショージ あなたとのデュエットがこの俺の最高の望み!あなたの歌声、あなたの歌の作り出すドラマ、すべてが俺を魅了する!!あなたのその歌手として魅力がこの俺を狂わせ、俺にトシを陥れさせた。すべてはあなたの罪なのだ!
アンナオコ ばかなことを!
ショージ 俺はあなたと歌いたい、あなたとを俺が組めば、それこそあなたがトシと組んで歌った「夏盛りへの字組」以上のヒットだって狙えるはずだ。
アンナオコ はっ、お前にトシ以上の販売能力があるとでも?!
ショージ 思い出すんだ、あの男の歌唱力を!あなたほどの歌い手が、あんな「ばいばいあっしゅーでぇ(ちょうしっぱずれに)」と一緒に歌って恥ずかしくはなかったのか?!
アンナオコ そ、それは、
ショージ あなたの歌唱力に見合った男でなくては、あなたの歌が台無しだ。あなただってわかっているはずだ!
アンナオコ おだまり、おだまり、おだまり!
ショージ 俺なら、あなたの歌を生かせてみせる、カモメはカモメ、孔雀や鳩や、まして歌手にはなれない〜んだ!
アンナオコ カモメはカモメ・・・
ショージ さあ、どうする。おれはあなたにOKをもらえなければ・・・すっぱりと歌手を辞めて田舎へ帰る覚悟だ。
アンナオコ そんな、まさか
ショージ 嘘ではない、あなたと共に歌えぬならば歌手を続ける意味など俺にはない!
アンナオコ そ、それほどまでに、私のことを・・・
間
「アンナオコさーん、出番でーす。」
アンナオコ ああ、いま行きます。おまえの・・・貴方の言うことはわかりました。確かに貴方の歌唱力こそが私の相手にふさわしい。あなたとならばクオリティの高い曲を世に送り出すことも可能でしょう。また、あなたほどの歌い手が歌手を辞めるなど、芸能界にとってどれほどの損失か・・・。このお話、喜んで引き受けましょう。
チョン!
ショージ ふ、こんなふうに口説かれた歌手がかつていただろうか、こんなふうに口説き落とされた歌い手がいるだろうか?あの女、とうとう最後には俺に敬語さえ使って引き受けた!まぁ、長く大事にする気はないが、話題づくりには1度のデュエットで充分だ。それにしても我ながらたいしたもんだ。あいつのめんこにしているトシの歌手生命を奪った俺が!あいつの尊敬するオヤジや親しくしていたジョージの兄貴を陥れたこの俺が!あの、人より離れた目には涙さえ浮かべて俺を非難している女を前にしてだ、その上、むこうには義理と人情と芸能界の上下関係といった堅いガード!こちらにはフォローしてくれる味方もない、言わばまったくの丸腰。あるのはフィニュッシュコーワに守られた美声と舌先三寸だけだ。それで女がなびく!今はやりのジャニタレでもなくしょうゆ顔でもないこの俺が!マッチョで胸毛がボーボーデンジャラスなこの俺が!俺は今までわが身を不当に見くびっていたらしいぞ。
それが証拠に、あの女には俺がいっぱしの大物歌手に見えるらしい。ふ、ハハハハ
こうしてリチャード・小金好ショージはアンという強大なるバックを手に入れ、果たして二人のデュエット曲は大ヒット。ショージは紅白のトリというポジションに向けて自分の地位を確固たるものへと強化してゆきます。そしてこんなショージの躍進振りに徐々に警戒し始める美カマ憲一ら白組の大物歌手たち。・・・、原作「リチャード三世」では兄王エドワード4世が后・エリザベス王妃一派がリチャードの動きに警戒を強めて騒ぎはじめる場面でございます。チョン!
美カマ憲一 ♪そうよ私は〜さそり座の女〜〜って、私がエリザベス王妃ってことは私が北島サブちゃんのお后ってことぉ?やだわ〜別に女役は嫌じゃないけど、どうせなら若い子の方がね〜きゃははは、あらやだ私ったらホホホホ、って、問題はそこじゃないのよ!サブちゃんが入院しちゃって紅白に出られないとすると、当然白組のキャプテンったら私じゃな〜い?それがなに?いつのまにショージなんかが白組キャプテンに、なんて話が出てるのよぉ?私は納得しないわよ〜
ショージ あなたが納得しなくても、世間は北島ファミリーの後継者として私を認知しているのですよ、そう、石原Q次郎亡き後のポジションがその役者の格に関係なく、石原軍団のNO2だった渡タツヤへと移ったように
美カマ憲一 ショージ!・・・ふん、お前、裏で随分とセコい手を使っているようじゃないか。そんな方法で台頭してきたところで、一般視聴者に支持されるとでも思ってかい?!
ショージ それは視聴者が判断すること、あなたの判断するとこではない。
美カマ憲一 なんと呆れた男だろう、そんなセリフ、視聴者が自分を支持する自信がなきゃ普通は言えないだろうに
ショージ 呆れるとはこっちのセリフ、あなたともあろうお人が紅白のトリ欲しさにあんな汚い手を
美カマ憲一 なんだって?私がいったい何を!妙な言いがかりはよしてちょうだい!
ショージ 言いがかりなどと、とんでもない。俺はちゃんとわかっている、ジョージの兄貴を陥れたのはアンタだろう!兄貴ならばオヤジの代わりにでてきてもおかしくはないからな!
美カマ憲一 私はやっちゃいないよ!確かにイタズラに暑苦しいあの男は私の趣味じゃないけれど、それとこれとは・・・ハッ!まさか、お前・・・!
ショージ おっと!何を思いついたかは知らぬが、口には出さぬが得策よ。俺にとっても、むろん、あなたにとっても!
美カマ憲一 ぐ、・・・それは脅しかい
ショージ さぁ?どうとでも
森アサコ 久しぶりに戻ってみれば、相も変わらず薄汚い人間が多いところね芸能界というところは。
美カマ憲一 あ、あんたは!
ショージ 離婚しても「森」アサコ!
森アサコ 私は森ケンイチと結婚する前から「森」よ!
美カマ憲一 ちょっと!あんたね〜結婚するとき紅白の大トリで華々しく辞めていったくせに、なによ、いまさら戻ってきちゃって!
ショージ そうだ、得意のお涙頂戴作戦で復帰早々、また紅白のトリねらいか?!
美カマ憲一 そうよ、なにかというと悲劇のヒロインぶっちゃって!森と私はケンイチ同士、仲良しだからかばうわけじゃないけど、あいつばかり悪者にしちゃって、いやらしい女よね、あんたって
それまで互いに言い争っていたはずのリチャードとエリザベス、ところが目の前に赤薔薇ランカスター家の元王妃マーガレットが現れた途端、白薔薇ヨーク家のリチャードとエリザベスは急遽結束してマーガレットに対抗いたします。これも紅白の世界で生きてきた歌手の性なのでしょうか、マーガレット森アサコはそんなリチャード・ショージとエリザベス美カマのふたりに呪いの言葉を吐き出します
森アサコ ふ〜ん、そう!私が来るまではお互いに罵りあい相手の喉元につかみかからんばかりだったのに、それが今度はみんなにして私に矛先をむけるの。ふん、それもこれも森ケンイチの呪いがそこらここらに満ちているというわけね。呪いが天に届くものならば、立ち込める雲よ、この私の呪いに道を譲るがいい、そしてお前らはみな転落人生をたどってしまいなさい!いい?今は揺るぎないポジションにいようとも、いつかはきっと落ちぶれる日がくるわ。かくいう私もかつては司会と同時に紅白の大トリを勤めた身、だがそんな私も鳴り物入りで芸能界に復帰させてもらってもCDの売り上げはいまいちパッとせず、話題だけで紅白を狙う生き恥をさらす毎日。エリザベス!じゃなかった美カマ!あんたもいつか私と同じ道をたどるわよ、そのときにはもうアンタは女でもなく男でもなく、アンタは紅白のどちらにもなれずに消えてゆくのよ!!
美カマ憲一 んまぁ、なんですって
森アサコ そしてショージ、恩知らずには必ず報いが待っているもの。お前もいつか信頼していたものに裏切られるに違いないわ!
ショージ どうも誤解があるようだ。俺は世渡りが下手で愛想のいいお世辞もいえぬ。だから胸に一物あるように見られる損な役回り。俺は誰も裏切ってはいないし、裏切られる予定もない。
チョン!
ショージ と、まぁあいつらの前ではああ言ったが裏切りを決行するのはこの俺、まっさきに騒ぎ立てるのもこの俺。自分が企んだヒミツの悪事の数々。その咎はいっさい他人に押し付けるという寸法だ。たとえばジョージの兄貴、あいつを陥れたのは他ならぬこの俺さまだが、そ知らぬ顔でその罪を美カマ憲一あたりになすりつける。騙されやすい馬鹿な連中はあっさり信じて、あんな奴に白組の大将はまかせられないと言い出して俺を担ぎ上げる。だがここが肝心!俺はため息などをもらし、聖書やら道徳の教科書からあれこれ言葉を借りて、こう皆をたしなめる。右の頬を叩かれたら左の頬を差し出せとかなんとか。昔ながらの有り難いお説教のつぎはぎで、俺は剥き出しの悪意に衣を着せる。それで俺はいい人になりすます。これぞまさに悪役の醍醐味!
と、悪の醍醐味を高らかにうたいあげるリチャードこと小金好ショージ!
原作のリチャード三世ではこのあと、兄王エドワード4世が思い直してクラレンス公ジョージを許そうとしますが、リチャードがいち早く手を打ち、哀れクラレンス公ジョージは暗殺されてしまいます。ジョージの幼い息子エドワードは父の死について祖母にたずねます、「王様が父上を殺したの?」と。ちなみにこの幼いエドワード、この物語ではぴ河ぴよしと申します。
ぴ河ぴよし ええ?あのカマ本ジョージさんが死んだ?それってまさか、北島さんの仕業だったら・・・やだねったら、やだね〜♪
ばばあ そんなことは誰にもわかりませんよ
ぴ河ぴよし ううん、僕にはわかるピヨ。ショージお兄さまが教えてくださったピヨ。北島さんは美カマさんにそそのかされてジョージさんを破門したって、ピヨピヨ。ぼくも人気があるから危ないって心配してくださって、頬にやさしくチューしてくれたピヨ。これからは不安になったら俺を頼れって、ショージお兄様は僕をうんと大切にしてくれるって、言ってくれたピヨピヨピヨピヨ・・・
なんだかピヨピヨうるさい子供でございますが、ぴ河ぴよしはまだまだ「ひよっこ」なので仕方ないのであります。そしてそれ故、まんまと小金好ショージの甘言に騙されすっかりショージを優しい兄貴分と信じて疑いません。ちなみに「頬にちゅー」とか怪しげなセリフもございますが、このセリフは原作に非常に忠実に再現しております。さぁ、原作が気になって参りましたね、みなさん!
そして原作リチャード三世ではこの後、エドワード4世が亡くなります。
オシ幾三 ♪俺は田舎のプレスリー、絶対プレスリ〜〜
ショージ そこで鼻歌をうたっているのは「田舎のプレスリー」ことオシ幾三兄さんじゃありませんか
オシ幾三 おお、ショージ!聞いたかオヤジのこと!
ショージ ええ、ジョージ兄貴に続き、オヤジまでもが・・・
オシ幾三 ショージ、いまは嘆いてる暇はねえべ!こうなったら俺たちゃのんきに座って泣いている場合じゃなか!
ショージ 幾三兄さん?
オシ幾三 これはまたとない機会じゃねえか、ほれ、お前がいつぞや酔ったはずみでもらした筋書き。あれがホントに酔った上でのたわごととは俺は思っちゃいねえぞ。ありゃお前の本心だろ。
ショージ 幾三兄さんそれは、、
オシ幾三 俺はお前に協力するぜ。前にも言ったが俺の目的は紅白じゃねえ、歌で銭こ貯めて東京でべこ飼うのが目的だぁ。協力する報酬にべこ飼う土地を用意してくれりゃあ、俺はそれでいいのよ、紅白でどうのこうのって野望はないから安心しな
ショージ よくぞ言ってくれました幾三兄さん、それでこそ我が片腕、我が腹心の参謀閣下、我が神託、我が予言!わかりました。この身はピ河ぴよしと同じくひよっこ同然。幾三兄さんのお指図に従うといたしましょう。ではすぐにでも行動に。遅れをとってなるものか
こうしてリチャード・小金好ショージとバッキンガム・オシ幾三は策略をめぐらせ、原作リチャード三世ではこれでもか!というほど次々に邪魔者を消してゆきます。それこそエリザベス王妃の身内はほぼ全員殺されたと言っても過言ではないくらい。そして有力な反対派がすっかりいなくなったところで、今度はふたり、民衆の前で「自分にはその気はないのに無理強いされた」という筋書きの大芝居をうって、ついにリチャード三世王が誕生するに至ります。
ショージ それじゃあオシ幾三兄さんは俺に紅白のトリを勤めろと?!
オシ幾三 そうよ、ふとあたりを見回せば有力な大物歌手のほとんどが何故か休業中で、いるのは歌の下手なジャニタレばかり。オヤジもジョージもいなくなった今、北島ファミリーを背負っているお前が紅白のトリを勤めて何がおかしい。
ショージ いやしかし、兄さん、
「そうだ、オシさんの言うとおりだ」
「やっぱり紅白のトリは歌のうまい人じゃなくっちゃ」
「それに貫禄もなくっちゃ!」
「じゃあやっぱりマッチョな小金好きショージさんがふさわしいっすよ!」
オシ幾三 ほらショージ、みんなもこう言ってるでねええか!
ショージ 幾三兄さん、それに思慮深いみなさん、みなさんは私が望むと望まないとに関わらず、紅白のトリを勤めろとおっしゃる。しかしみなさんの仰ることも然り、ならば引き受けねばなるまい。私には自信がないが、その勤め、できる限り果たせるように努力してみましょう
チョン!
「聞きました?アンナオコさん、小金好さんが紅白のトリを勤めることになったんですって!」
「でも小金好さんってヒット曲といえば、ナオコさんとのデュエット曲くらいしかないでしょう」
「だからぁ〜その曲で出るんならナオコさんもトリを勤めることになるんじゃないですか?!」
「そういえばそうね、すごいじゃないですか、おめでとうございます、ナオコさん!」
アンナオコ 私は以前こう言った。「呪われるがいい、もしあの男とデュエットを歌うような女がいれば、その女はあの男と歌うことで歌手生命を失うがいい!私が「夏盛りへの字組」でデュエットを組んだトシの転落人生を悲しむように、いや、それ以上に苦しむがいい」と。ああ、その呪いを繰り返す間もあらばこそ、この芸能界という底なしの野望うごめく世界に生きているこの身の愚かなこと。奴の甘い言葉にのせられ、まんまと奴とデュエット曲を出してしまった。私は私を自分ではいた呪いの餌食にしてしまったとは!奴とのデュエット曲がいくらヒットしようとも、私の心が晴れることはない、いつも、どう足元をすくわれるか、弱みを握られるかおびえてばかり。それに、私がいる限り、この曲で紅白に出るならば芸能界での私との力関係からして私たちのユニットは赤組として扱われてしまうだろう。それではあの男は納得すまい。あくまでも白組の大将としてトリをねらう奴なれば・・・きっとそのうち私を亡き者に・・・
もし本当に彼女が愚かな女であれば、紅白のトリを目の前にぬか喜びする場面ではございますが、アンナオコ、さすがは芸能界を第一線で生き残ってきただけあって、自分の置かれた立場を非常に正確に把握しておりました。そしてこの予想どおり、彼女はリチャードによって静かに表舞台から去っていくことになるのでございます。
そしてまた一人、リチャード・小金好ショージに裏切られる者が・・・
オシ幾三 俺は田舎のぷれすり〜絶対ぷれすり〜♪ やぁやぁ、ショージ!うまく行ったなぁ
ショージ そうですね
オシ幾三 それでだ、そろそろ用意してくれっかな、例の約束の
ショージ はて?
オシ幾三 だからよ〜土地だよ土地!「東京でべこ飼うだぁ〜♪」ってな!ガハ、ガハ、ガハハ!
ショージ 冗談でしょう、東京で牛なんか飼えるもんですか
オシ幾三 なぬー
ショージ そんな世迷いごとはカラオケででも歌っていてください。それじゃあ俺は衣装の仮縫いがあるので、これで。ごきげんよう、幾三兄さん
オシ幾三 おい、ショージ、待て、待てって・・・!あ、・・・行っちまった!・・・・これが答えか?骨身を惜しまず協力してやった返しがカラオケで歌ってろだぁ?あのやろう〜、一発ぶん殴ってやらんと気がすまねぇ!ああ、でもアイツに陥れられた奴らを思い出したぞ、こりゃいかん、下手したら俺もやられちまう。まだバラエティでも生き残るチャンスがあるうちに演歌界からは逃げ出した方が良さそうだ、はひ〜まったくまいったな、こりゃ
こうしてショージは裏切りに裏切りを重ね、自らの野望の実現に向けて突き進みます。そして次なるターゲットは・・・
ショージ カマ本ジョージの兄貴やオヤジは地獄へ送ったし、ぴ河ぴよしはホストクラブへ転職させたしアンナオコもこの世界にさよならを言ってもらったと。あとはいまだにしぶとく生き残ってる美カマ憲一に、図々しくも紅白のトリをねらっているという赤組の和田アツコだ。どれ、ひとつ手を打っておくか・・・
チョン!
美カマ憲一 ひ〜!!ショージ、次の狙いはあたしかい?!いやいやいや、あたしは何にも狙ってない!あたしは紅白のトリなんかちっとも狙ってないよ!あたしはちょっと派手な衣装をきて、小林シャチコと衣装対決なんかしちゃったりして賑やかしの役回りでいいんだ、ああ、それでもまだ心配なら、そうだ、あたしが実は女だってことにしてもいい!だったら白組のキャプテンの資格もないし、あんただって安心だろう、ね、あたしのことは見逃しておくれよ、頼むわよぉ〜あたしが不遇の時代を経て、ようやく今のポジションに返り咲いたのはあんただってよく知ってるだろう?
ショージ 何を心配される。俺は別にあなたに何もしようとは思わぬ。だが、そうですね、あなたが赤組というのはなかなかいい案かもしれません。あなたが赤組に行って赤組のキャプテンになれるよう協力しましょう
美カマ憲一 は?
ショージ 白組の大将の座は私がもらいますが、そのかわりあなたに赤組の大将のポジションを差し上げたいと言っているのです。あなたならば話題性で和田アツコにも勝てましょう。なんと言ってもあの女は目障りですし・・・
美カマ憲一 そういうことかい、でもまさか、あたしが赤組のキャプテンだなんて・・・魅力的な話ではあるけれど、まさか無理でしょう、やっぱり
ショージ 御自分で御自分の限界を決めてはなりません。考えておいてください、俺はいくらでも協力しましょう!
自分のポジションを揺ぎ無いものにするために画策するリチャード・小金好ショージ。しかし、度重なる裏切りで信用を失い、一時の勢力を失いつつあったショージのこの企みは実現せぬまま、紅白のステージを迎えます。しかもこれまでの悪行の報いか、とうとう反ショージ派が立ち上がり、赤組最大のゴッドネエチャン和田アツコのもとに終結します。この和田の軍勢の勢いは留まるところを知らず、ショージに次々と襲い掛かります。これからステージだというのに、ショージの衣装は無残にも切り裂かれ、下駄箱の靴は隠され、その代わりに用意されたトウシューズには画鋲が!なんという大映ドラマ的ベタな嫌がらせ!しかも歌手の生命線ともいうべき、ショージのマイマイクまで隠されてしまったのです!!
ショージ マイクをくれ!マイクを!この芸能界という名の戦場には和田アツコが6人いるらしい、今日だけで5人もの和田アツコをたおしたが、いずれも影武者。吉村何某だの清水何某だの岩本何某だのコロッケパンだのどいつもこいつもモノマネの上手い偽者ばかり。挙句、俺は大事なマイクを隠されると言う大ピンチ!ああ、マイクをくれ!マイクを!!マイクをくれたら紅白の大トリをくれてやる!あ、あああああ〜
「ああ、ショージが奈落に落ちた!」
「どうするんだ、この後のステージ!」
「ここ1番の見せ場だぞ!」
和田アツコ あたしがでるよ!
「アツコさん無茶だ、いま、赤組が歌ったばかりで次は白組の番ですよ!」
和田アツコ ふふ、忘れちゃいないかい?私は白組のなんとかってグループとのコラボでヒット曲を出したことを!このユニットならばあたしだって立派な白組の一員さ。お前たち、出るよ、いいね!
「「「はい」」」
和田アツコ 長年、多くの歌手に野望をもたせ、そして狂わせてきたこのステージ、今こそあたしが紅白の融合を果たしてキレイに終わらせてやろうじゃないか。そして今度こそ争いのない、心癒すための歌番組として末永く日本人の心とともに残っていけるように、今宵、多くの歌手の煩悩を浄化するため、あたしはこの歌で除夜の鐘をならすとしよう
「アッコさん!」
「アッコさん、アッコさん!!」
(そして和田の曲「あの鐘を鳴らすのはあなた」が流れて――)
こうして、ショージの野望はついに終わりを迎え、日本の歌謡界にはふたたび平和のときが訪れたのでございます。原作リチャード三世も、ランカスター側の若き大将・リッチモンドによってリチャード三世が倒され、リッチモンドと亡きエドワード4世の娘の結婚によってランカスター家とヨーク家はひとつになり、ここで長き薔薇戦争は終結を迎えるのでございます。
かなりバッサリと端折った部分もございますが、以上がリチャード三世の大まかなお話でございます。
この芸能界版リチャード三世で少しでも、シェイクスピア史劇「リチャード三世」に興味を持ってくだされば幸いにございます。
それではこれにて、この物語も幕を閉じたいと思います。
長らくのお付き合い、ありがとうございました。次は楠美津香のひとりシェイクスピア・超訳リチャード三世をお楽しみくださいますよう、心からお願いを申し上げ、結びのご挨拶とさせていただきます。
本日は誠にありがとうございました
チョンチョンチョンチョン!
完
2006年12月21日(木)AirてっしBスタジオで収録。
☆CAST☆
ナレーション RIKA
小金好ショージ HASSHIY
北島サブ男 カマ本ジョージ オシ幾三 美カマ憲一 和田アツコ(5役) KEN
アンナオコ 森アサコ ぴ河ぴよし(3役) KANAE